• 2025年8月6日

保証人に代わる存在となる家賃保証会社とは

アパートやマンションなどの賃貸借契約では、入居者に対して連帯保証人を選定し、署名・捺印等を得た上で契約書面を取り交わすのが一般的です。
これはあくまでも習慣的なものであって契約成立のための絶対条件ではありませんが、金銭の貸借を行う場合などと同様に、貸主側の要請によって広く行われています。
連帯保証人は、賃貸物件における家賃等の支払いについて入居者と連帯して責任を負います。
つまり入居者と同等の支払い義務を持っていることになりますが、通常は入居者が家賃を滞納した場合に、貸主からの求めに応じて代理弁済を行うことで責任を果たすという形式をとります。

 

家賃保証会社について

ところが、近年ではこうした形式に代えて、家賃の支払いを第三者に保証してもらうタイプの契約方式が増えてきています。
一般的な連帯保証人は入居者の親族、特に親が選定されることが多いですが、この場合は株式会社等の企業が有償サービスとして保証を行います。
全保連など、このようなサービスを手がける会社のことを、家賃保証会社と呼びます。
家賃保証会社は、入居者及び物件貸主の双方と契約を結び、家賃に対する支払い保証を行います。
その対価として、通常は入居者から保証料を徴収します。
連帯保証と違って支払い責任が生じるのはあくまでも入居者が所定の期日までに家賃を支払わなかった場合に限られますが、経済的な効果はほぼ同じであるため、一般には「連帯保証人代行業」として認知されています。

全保連 烏川

 

家賃保証会社が生まれた背景

このようなサービスが生まれてきた背景には、賃貸住宅をめぐる環境の変化が挙げられます。
従来、賃貸住宅の主な顧客は若年層でした。
連帯保証人についても、進学や就職を機に独立し、ひとり暮らしを始めるに際して、身元保証を兼ねて親が選任されるケースが大半を占めていました。
しかし近年では、賃貸暮らしをする高齢者の数が増加傾向にあります。
そうした高齢者の場合、親がすでにリタイアして収入がなく、連帯保証人としてふさわしくない、あるいはすでに他界しているといった事情を持つケースが少なくありません。
また、国際化の進展に伴い留学や就業目的で来日した外国人が賃貸住宅を利用しようとする機会も増加していますが、彼らもまた、連帯保証人を引き受けてくれる人を日本国内で見つけることが難しいのが現状です。

 

連帯保証人を選定できない人

こうした状況においては、賃貸物件の貸主は経営上の判断を迫られることになります。
すなわち、連帯保証人を選定できない人には物件を貸さないか、それとも保証人なしでも貸すかです。
しかし保証人のいない入居希望者をすべて断っていては、物件の稼働率が下がってしまうおそれがあります。
かといって、保証人なしで貸した入居者が万が一家賃を滞納し、そのまま回収不能になったりしたら、収益の機会を逸することになります。
こうした課題を解決すべく登場したのが、家賃保証サービスです。
連帯保証人を代替する存在として支払い保証を行うことで、入居者に対しては物件を借りやすく、貸主に対しては貸しやすくなる環境を整備します。
マクロレベルで見れば、賃貸業界全体の活性化に役立つ存在であるとも言えます。

 

すべての賃貸物件に対して家賃保証サービスが利用できるとは限らない

ただ、入居者側にとって注意が必要なのは、すべての賃貸物件に対して家賃保証サービスが利用できるとは限らないことです。
サービスを利用するかどうかは、あくまでも貸主側の裁量に任されています。
もちろん、貸主側から利用を示唆されなかった物件において、入居者側から利用したい旨の申し出を行うことは可能です。
しかしその場合でも、最終的な決定権は貸主側にあります。
もし申し出が受け入れられなかった場合は、あきらめて他の物件を探すか、どうにかして連帯保証人になってくれる人物を探すかすることとなります。

 

審査の基準は保証会社ごとに異なる

また、保証サービスが利用可能な物件にあっても、実際に利用するとなると家賃保証会社による審査を受ける必要があります。
その結果、利用不可となるケースがあることにも注意が必要です。
審査の基準は保証会社ごとに異なり、またその内容も公表されてはいませんが、重視されるのは言うまでもなく家賃の支払い能力があるかどうかという点です。
安定した継続的な収入があるか、入居しようとしている物件の家賃水準が収入に比べて高すぎないか、といったことが審査のポイントとなります。
また、保証人的な存在は求められないものの、万が一の場合に備えて連絡のつく親族や知人などの選任を求められるのが通例です。

 

まとめ

審査に通ると、賃貸借契約とは別に保証会社との間に保証契約を交わし、保証料を支払って利用開始となります。
支払い方法は、契約時に契約期間の全部(通常は2年分)を一括払いし、契約を更新するたびに一括払いを続けていくスタイルのほか、1年ごとに支払うスタイルや、毎月の家賃に上乗せして支払っていくスタイルなどがあります。
保証サービスを利用すると、家賃や管理費などの住居費にさらに保証料が加わるため、入居者はその分を考慮して家計管理を行う必要があります。
 

最終更新日 2025年7月8日 by iafpe