• 2025年8月6日

税理士法人を設立することのメリット

税理士といえば、いわゆる独立開業系の資格の中でも非常に知名度の高いものの1つです。

確定申告や相続税の手続きなど、いわゆる税務のスペシャリストであり、「○○税理士事務所」という名称のもとに1人1人が独立した事業者として業務に当たっている、というのが一般的なイメージです。

その一方で、近年では税理士法人と呼ばれる組織の一員として活躍している税理士の姿もよく見かけるようになっています。

これは、その名の通り法人格を持つ事業者で、個人事業所である税理士事務所とは性質が異なります。

ただ、業務の範囲自体は変わりません。

参考→日本クレアス税理士法人

 

2001年の法律改正によって創設された制度

税理士法人は2001年の法律改正によって創設された制度で、一定の要件を満たした税理士事務所には法人格を認めるというものです。

具体的には、2人以上の税理士が社員となり、登記を行うことで設立が認められます。

なお、ここでいう社員とは一般企業における従業員のことではなく、その法人の設立主体、株式会社で言えば株主に相当する存在を意味します。

この法人の法律的な位置づけは、税理士法に定める特別法人となります。

したがって、商法に定める会社とは異なり、行うことのできる業務は税理士法に定められた範囲内のみに限られます。

つまり簡単に言えば、通常の税理士事務所とまったく同じということになります。

税理士側から見た場合、税理士法人を設立することにはいくつかのメリットがありますが、最も大きいのは業務の継続性が担保されるということです。

法人格を持たない事務所の場合、病気や欠格事由への該当などによってその事務所から税理士がいなくなってしまえば、原則として業務を続行することができません。

給与計算の代行など一部の業務は継続可能ですが、税務に関する手続きの代理や税務書類の作成代行などは、税理士資格を有する者のみに独占的に認められた業務です。

しかし法人を設立すれば、通常の会社における社長の交替などと同じように、代表者が交替しても法人格には変わりがないため、そのまま業務を継続することができます。

万が一急病などによって税理士に故障が生じた場合でも、2人以上の有資格者が在籍しているために緊急の対応が容易になります。

 

事業の多角化が図れるというメリットもある

業務の継続性に加えて、税理士法人の設立には事業の多角化が図れるというメリットもあります。

税に関する法律や手続きは複雑かつ専門性が高いため、個人の税理士がすべての分野をカバーするのはなかなか困難です。

そこで、現在では法人専門・相続専門・海外専門など、特定の分野に絞って業務を行う税理士が増えてきていますが、個人事務所であれば、専門外の分野に関する依頼が来た時はそれを受けられない可能性があります。

しかしそれぞれの分野に強みを持つ税理士が集まって業務を行えば、1つの事務所でも広い範囲をカバーすることが可能になります。

多角化ということに関してさらに言うなら、法人化することで営業エリアを広げることができるというのも大きな利点であると言えます。

税理士法人の場合、それぞれの事務所に税理士を1名以上配置すれば、支店を設置することが可能です。

これを活用すれば、より多くの顧客を獲得することができますし、たとえば現在顧問契約を結んでいる企業が所在地を移転したとしても、移転先に支店があれば継続してサービスを提供することができるようになります。

 

法人化による節税効果が見込める

その他、本業に関わること以外にもいくつか利点があります。

代表的な例としては、法人化による節税効果をあげることができます。

一般の会社と同じように、法人化すれば経費として計上できる範囲が個人の場合よりも広がるうえに、税率面でも有利です。

また、健康保険や厚生年金などの社会保険に加入するみちも開かれます。

個人事務所の場合であれば、従業員については加入できますが、税理士本人は事業主体そのものとなるため、被用者を対象とする社会保険の適用を受けることはできません。

しかし法人の場合は代表者である税理士も「法人に使用される者」と見なされるため、加入することができるようになります。

さらに、税理士の交替に伴って退職金を支給することが可能になるというのも、法人化ならではのメリットです。

これもまた、個人の事業主から法人に使用される者として身分が変わったことによるものです。

一方、顧客サイドから見た場合でも、業務の継続性という観点から法人に業務を委託することはメリットとなります。

スポット契約の場合はともかく、顧問契約ともなれば企業と税理士の間には長期にわたってパートナーシップが構築されるというのが基本的な前提です。

そのため、税理士側が法人格の取得によって長期的に安定した事業運営を行う体制を整えてくれるのであれば、業務を委託する際にも安心感があります。

万が一、税に関わる訴訟等のトラブルに見舞われ、解決までに長い時間が必要になると見込まれる場合であっても、有益なサポートを継続的に受けられるという期待が生まれます。

最終更新日 2025年7月8日 by iafpe